補仮想仕事の原理

Composition of Forces

一つの質点に3つの力が作用しているとします。力の釣り合いは

(1)
\begin{align} \boldsymbol{f}_1+\boldsymbol{f}_2+\boldsymbol{f}_3=\boldsymbol{0} \end{align}

と書けます。勝手な$\delta\boldsymbol{x}$により

(2)
\begin{align} \delta w=\left(\boldsymbol{f}_1+\boldsymbol{f}_2+\boldsymbol{f}_3\right)\cdot\delta \boldsymbol{x}=0 \end{align}

と書きかえられ、こらは仮想仕事の原理と呼ばれます。(2)式は$\delta\boldsymbol{x}$の任意性により逆に書き戻すこともできます。
両者は数学的に等価です。基本的にはどちらを用いてもよいのであって、このままでは仮想仕事の原理とはなんなのか釈然としません。そこで次のように書き換えます。

(3)
\begin{align} \delta w=\boldsymbol{f}_1\cdot\delta\boldsymbol{x}+\boldsymbol{f}_2\cdot\delta\boldsymbol{x}+\boldsymbol{f}_3\cdot\delta\boldsymbol{x}=0 \end{align}

すると、実はここに$\boldsymbol{f}_1,\boldsymbol{f}_2,\boldsymbol{f}_3$が作用する点が同一の質点であるという暗黙の条件が隠されていることに気付きます。このことを明示的に表現すると

(4)
\begin{align} \delta w=\boldsymbol{f}_1\cdot\delta\boldsymbol{x}_1+\boldsymbol{f}_2\cdot\delta\boldsymbol{x}_2+\boldsymbol{f}_3\cdot\delta\boldsymbol{x}_3=0 \end{align}
(5)
\begin{align} \delta\boldsymbol{x}_1=\delta\boldsymbol{x}_2=\delta\boldsymbol{x}_3 \end{align}

なる形式に帰着します。もちろん2番目の式は、我々が当たり前と考えていた3つの力の作用点が常に同一という条件

(6)
\begin{align} \boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{x}_2=\boldsymbol{x}_3 \end{align}

とのアナロジーになっています。これは力の釣り合いと対をなす幾何学的適合条件を表しています。幾何学的適合条件を満たす$\delta\boldsymbol{x}_1,\delta\boldsymbol{x}_2,\delta\boldsymbol{x}_3さ$幾何学的に許容な方向と呼びます。さて、幾何学的適合条件は扱いにくいので次の形式に書き換えましょう。

(7)
\begin{align} \delta \tilde{w}=\boldsymbol{x}_1\cdot\delta\boldsymbol{f}_1+\boldsymbol{x}_2\cdot\delta\boldsymbol{f}_2+\boldsymbol{x}_3\cdot\delta \boldsymbol{f}_3=0 \end{align}
(8)
\begin{align} \delta\boldsymbol{f}_1+\delta\boldsymbol{f}_2+\delta\boldsymbol{f}_3=\boldsymbol{0} \end{align}

これは仮想仕事の原理と対となる補仮想仕事の原理を表しています。(8)式を満たす$\boldsymbol{f}_1,\boldsymbol{f}_2,\boldsymbol{f}_3$力学的に許容な方向と呼びます。すべての力学的に許容$\boldsymbol{f}_1,\boldsymbol{f}_2,\boldsymbol{f}_3$に対して(7)式を満たすためには$\boldsymbol{x}_1,\boldsymbol{x}_2,\boldsymbol{x}_3$の組は$\boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{x}_2=\boldsymbol{x}_3$を満たす必要があります。従って補仮想仕事の原理幾何学的適合条件と数学的に等価です。
以上の事柄は結局

(9)
\begin{align} \left[a\ \ b\ \ c\right] \end{align}

(10)
\begin{align} \left[A\ \ B\ \ C\right]^T \end{align}

がそれぞれ

(11)
\begin{equation} a+b+c=0 \end{equation}
(12)
\begin{equation} A=B=C \end{equation}

を満たすとき、その内積が常に0となることと大いに関係があります。これは直交条件と呼ばれます。直交条件は束縛運動などで登場しますが、上で見たように単なる質点の釣り合いすら見出されますから、力学における様々な問題に直交条件が隠れており、仮想仕事の原理を書き下すことで直交条件が姿を現すこととなります。
基底に分解してみましょう

(13)
\begin{align} \left[1\ -1\ 0\right],\left[0\ 1\ -1\right] \end{align}

これらは力学的に許容な方向で2次元空間を張ります。

(14)
\begin{align} \left[1\ 1\ 1\right]^T \end{align}

こちらは幾何学的に許容な方向で1次元空間を張ります。つまり3次元空間が直交分解されたこととなります。

Elastic Spring

後日書きなおし!!!
ばねの伸びを$d$と置きます。ばねの張力を$n$と置きます。ばねの一方は固定され、一方には荷重$f$が作用しているとします。ばねの伸びていない状態から計った荷重の移動距離を$x$とおきます。
釣り合い式は

(15)
\begin{equation} n+f=0 \end{equation}

幾何学的適合条件は

(16)
\begin{equation} d=x \end{equation}

と書けます。
仮想仕事の原理

(17)
\begin{align} n\delta d+f\delta x=0 \end{align}

として与えられます。ただし$\delta d,\delta x$幾何学的に許容でなければいけませんから

(18)
\begin{align} n\delta x+f\delta x=0 \end{align}

$\delta x$の任意性より

(19)
\begin{align} \therefore n+f=0 \end{align}

を得ます。つまり仮想仕事の原理は釣り合い式と数学的に等価です。
一方で補仮想仕事の原理

(20)
\begin{align} d\delta n+x\delta f=0 \end{align}

と書けます。ただし$\delta n,\delta f$は力学的に許容つまり

(21)
\begin{align} \delta n+\delta f=0 \end{align}

を満たす必要がありますから

(22)
\begin{align} d\delta f-x\delta f=0 \end{align}

$delta f$の任意性より

(23)
\begin{align} d-x=0\therefore d=x \end{align}

を得ます。つまり補仮想仕事の原理幾何学的適合条件は等価です。
以上のような仮想仕事の原理補仮想仕事の原理の相補性からこの問題は

(24)
\begin{equation} a+b=0 \end{equation}

を満たす

(25)
\begin{align} \left[a \ \ b\right] \end{align}

(26)
\begin{equation} A=B \end{equation}

を満たす

(27)
\begin{align} \left[A \ \ B\right] \end{align}

が常に直交しているものとする純粋な直交条件に帰着されることに気づきます。
基底に分解してみましょう

(28)
\begin{align} \left[1\ -1\right] \end{align}

これらは力学的に許容な方向で1次元空間を張ります。

(29)
\begin{align} \left[1\ 1\right]^T \end{align}

こちらは幾何学的に許容な方向で1次元空間を張ります。つまり2次元空間が直交分解されています。